exPod/エクスポッド - ポッドキャストでブログをもっと楽しむために

インタビュー

Vol.09 thin-p ポッドキャストの可能性を信じている

ポッドキャストに関わる様々な方にお話をうかがう「Podcast界隈」。九回目となる今回は、ポッドキャスターのthin-pさんにお話を伺いました。

thin-pさんは、ポッドキャスト番組「A'sf-Pod-Radio」を配信されているだけでなく、ポッドキャストビギナーズクラブというポッドキャストに関するビギナー向けのワークショップイベントを開催されるなど幅広い活動をされています。

ポッドキャストビギナーズクラブ

まず、ポッドキャストビギナーズクラブ(以下PCBC)についてお伺いしたいんですが。やっぱりポッドキャストを広めていきたいという思いから始められたんですか?

最初の頃、ポッドキャストやってみたいんだけどとか、番組の中で音楽は使っていいんですかとか、そういう問い合わせをいくつかいただいて。で、それに一つ一つメールでお答えしたりしていたんですけど、みんなで共有できる場を作った方がいいだろうと思って。実は当時からというか最初のころmixiにそういうコミュニティが結構あったんですけど、閉じられた場所でのやり取りしかないわけじゃないですか。なかなかそういうところに飛び込む勇気がない人がそういう情報が得られる場が無かったんです。

で、僕みたいにインターネットやWebのスキルがないものがやった方がみんな垣根が無くていいのかなと勝手に思って。同時に、わりと人より早く始めていたおかげで多少のボク自身のネームバリューというか名前が通った部分があったので、やってみようと思ったんです。それで一人でも二人でも興味をもって、自分が配信しないまでも、ポッドキャストを利用してくれる人が増えればいいなと思ったんですよ。

で、そうこうしていたら、アメリカの大学生がなぜかメールをくれたんです。

アメリカの大学生?アメリカ人の方ですか?

そぉ、アメリカ人です。当然、僕がしゃべっている日本語の言葉はわからないけれども、番組の雰囲気とか音楽とかがすごく気に入ったということなんです。そのうち、僕の事を師匠とか呼びはじめて(笑)。 で、それにいろいろ答えていった中で「そんなに音楽が好きで興味あるんだったら、やってみたら?もしなんだったら僕が教えてあげるよ」なんて偉そうに返したら、その彼がやり始めたんですよ。

背中を押してあげたことで始めてくれた人が、一人でもいたっていうのがすごくうれしくて。他にも、中学生ぐらいのリスナーがメールくれたりとかということもあって。

だったら、番組とは別のブログみたいなものを作って、それがコミュニケーションの場になればいいなと思ってはじめたのがPCBCなんです。

情報提供やコミュニケーションの場を提供したいということだったんですね。でも、それを実際のイベントにまで持っていくというのはなかなか難しいと思うんですが。それはお仕事柄というのもあるんでしょうか?

それもありますが、最初のころのポッドキャストって、自称音楽番組とか、音楽を愛してきたのでポッドキャストで紹介するみたいなことを言っている番組にかぎって音楽の扱いがズサンだったんですよ。そういうことに対して、やっぱりそうじゃないよって。音楽をもっと大事に扱ってよっていうのがあって。

あと、アメリカにはポッドキャストで使える音楽のサービスとか、それをどんどん活用している人たちが沢山いるんだけど、日本人が使えるそういうサービスやサイトというのがなかったんですよね。もちろん、英語ができれば分かるんだけど、日本の著作権とアメリカの著作権の違いとか照らし合わせて考えられる人はそういないので、日本人向けのそういうサイトがあったらいいねっていうところで「...My cup of tea...」というポッドキャストをやっているポトフさんと意気投合して。

それで、ポトフさんが中心になって「Pod Music Street」という音楽をみんなでシェアしようというサイトを作ったんです。そのライブイベントとしてPod Jamをやり始めた時にアップルストアのスタッフの方がそれ見てくれて「それをビギナー向けにワークショップイベントとしてやることはできますか?」っていう風に声をかけてくれたんですよ。

だからPod Jamが先にあって、PCBCはスピンオフ的なものなんです。

それが2007年に2か月に1回ずつ、計4回やって。2008年は1年間お休みさせていただいたんですが、いよいよ満を持して2009年1月24日にリブートって感じです。

ポッドキャストはまだ始まったばかり

休止されていた2008年は、Podcast Summitも開催されなかったので、ポッドキャスト界としてはちょっとさみしい状態だったと思うんですが。

ポッドキャストってまだ日本では始まったばかりで、起承転結の承にも差し掛かってないぐらいのものだと思うんですよね。それをなんか、最初の勢いみたいなのでワーっとなって、色々なところが食いついて、ひっかきまわして。で、メジャーメディアを含めてですけど、一部のポッドキャストやってる側がネガティブなことを言い出して。イベントの中でもネガティブな意見、マイナスな雰囲気みたいなものが漂って、その内、ポッドキャストは終わったみたいな雰囲気を勝手に自分たちで作っちゃったところがあるような気がするんですよ。こう言うと誤解を生じるかもしれないんですが。

だから、それが歯がゆい部分もあって。で、僕自身、事情があって2008年の1年間は目立った活動はできなかったんですが、今年は「いや、まだポッドキャスト終わってないぞ!むしろ始まったばっかだぞ!」ということを、もう一度旗を振ってみなさんに伝えたいと思って。ボクが一人でやるぞって言ったって何か大きく世の中が変わるわけじゃないんだけど、自分自身やりたい気持もあって、やっちゃいたいな、という感じなんですよね。

熱いですね!これまでにインタビューやレビューにご協力いただいた方々もそうなんですが、とにかくポッドキャスターって熱いなと思うんです。

やっぱりみんな、愛情というか、想いがある人たちばっかりが今残っているというか、今も継続しているんだと思うんです。

自分で配信することもさることながら、リスナーであってもユーザーであっても、これって本当にやってみないとわかんないものなんですよね。とにかく、ポッドキャストって、いろんなものが世界中にあふれていて、本当に自分が探す気になれば、どんだけでも素晴らしい番組とか情報って見つかるものじゃないですか。だから、やっぱり使ってもらいたいって気持ちを多分皆さんおなじように持ってると思うんですよ。だから、熱く語ったりもすると思うんですけど。

僕自身が感じたのは、って僕が話すのもおかしいんですけど…。 ポッドキャストっていうもの自体が関係していると思ったんです。ポッドキャストっていうのは皆さん個人個人の想いを表現するものなのかなと思っているんです。で、その想いを表現するということを継続してやってきた方々だからこそ熱い想いを語っていただけるのかなとそんな風に思っているんです。

その通りだと思いますよ。これだけでやってる人ってそうそういないわけですから、それぞれみなさん仕事があったりとか、そういう中で本当に忙しかったり体調も含めて、例えば一ヶ月二ヵ月どーしても配信ができない更新ができないことがあると思うんです。それでもやっぱり自分以外のだれかのポッドキャストはずっと聞いていたりとか。そこにまだ聞いていない再生していないポッドキャストが100ぐらいたまっていようが、ずっとダウンロードしていたりとか。みなさんそういう感じなのかなと思うんですよね。

それは、テキストにはない何かがそこにはあると思うんですよ。

「テキストにはない何か」ってなんだと思われますか?

あのね、つながってる感というか、自分もここにいてその人もそこにいるという安心感というか。ちょっと変な表現ですけど、手を繋いでいる的な。なにか、その手は自分からは離したくないみたいな。

音声ってやっぱりそれが生きてるもんだって感じがするのかもしれないからこそ、なんか削除されてたり無くなっちゃってたりするとすごく不安になったり。結局、自分だけの想いじゃどうにもならないものがそこにあるような気がするんですよね。

探していたものが全部その中にあった

ところで、ポッドキャストを始めたきっかけというのは?

ポッドキャストというかラジオがとにかく好きで、子供の頃からずっとラジオばっかり聴いていたんです。で、それの真似事みたいなことも昔やってたりもしたんですけど。で、実は若い時はラジオのFM番組の制作に携わったこともあったりとか。 で、自分でも表現していきたいというのも片方にはあって。

ポッドキャストというのを2005年の5~6月にはじめて知ったとき、これだ!と。探していたものが全部その中にあったんですよ。ポッドキャストというものの中に。

音楽とラジオが大好きで、写真とか映像とか文章も表に出すのが好きで。そういったものを組み合わせたり色んな風に形を変えて、Webサイトではない表現の仕方というか。

あと、昔、子供の頃に短波放送というのがはやったんです。ソニーのスカイセンサーというラジオをお年玉で買って、それで夜な夜な世界の色んなものを受信してべリカードを集めるのが好きだったんです。

すごいそれに通じるものをポッドキャストに感じたんです。インターネットだから世界中どこからも聞けて。それこそアメリカ人の学生じゃないですけど、そういった人たちからのリアクションとかフィードバックがある。そんな予感みたいなものをポッドキャストの中に感じることができて。

2005年7月7日にNiftyが「Podcasting Juice」を始めるというのをYahoo!のヘッドラインで見つけて。これだっ!と、その日に徹夜してファイルをアップしてスタートしたんです。

イベントの開催にしてもポッドキャストのスタートにしても、実行力があるというか、フットワークが素晴らしく軽いですねっ!

僕は四重人格なんですよ。自分で何か表現したいっていう、ポッドキャストでいえばポッドキャスターという立場であり。

ディレクターとかエディターとか番組制作とか演出的な本業でやっている部分もあったりとか。だから番組にしても音楽番組だったらこういうのが必要だよなとか、BGMはこういう話題のときにはこうだよなとか。

それから、イベントなどの仕掛をやっていったりとか。例えばWeb上で「voices united」っていう皆さんの声を集めてクリスマスソングを作りましょうという企画をやったりとかね。そういったことをやっていく仕掛とかっていうのはプロデューサー的な感じ。

それともう一つ、本当にすっぴんの一音楽ファンというか一リスナーみたいなね。ポッドキャストそのものをゲラゲラ笑って楽しんだりとか。「だよなー」とかって言いながら膝をポンとたたいて聞いてるとか。そういう4つのものがあるんですよ。

だから、タイミングは今だ!とかっていうのは割と敏感というか。自分で言うのもなんですけど(^^;

話は戻りますが、PCBCはPod Jamのスピンオフということで、PCBCの方は1月24日にリブート。Pod Jamの方も今後やられる予定はあるんでしょうか?

終焉させてしまったつもりはまったくなくて。ただ、5回目までやって、ボクの番組に楽曲を提供してくれているアーティストのみなさんが非常に注目してくれて、Pod Jamにも色々な形で参加してくれたんです。その反面、日本国内の方がポッドキャスト同様なかなか熱くなって行かないって感じがあって。5回同じような形で繰り返してきたので、一旦その形はまあいいかなと。

次やるんだったらというイメージはもうあるんです。2008年一年間ボクが何もできなかったので、今年はその辺りも動かしていこうと思ってます。

これは楽しみですね!最後になりますが、これからポッドキャストを始める方にメッセージをいただけますか

僕はポッドキャスティングの可能性を信じているんです。だから、メディアとか適当な連中がポッドキャスティングの限界みたいなことを言っていても、そういう言葉に惑わされないように。イイナと思う人はぜひやってください。あぁ、そんなもんかと思う人は、いつかこっち向かせてやるからまってろヨみたいな(笑)。

あとは、とにかくまだ始まったばっかりなので。今からやっても自分はそこまでいけないなんて勝手に思い込んでる人のブログとかも見たりすることありますけど。とにかく、やらないと分からないんで、ぜひ、やってみてください!

Podcast界隈:ポッドキャストに関わる方々へのスペシャルインタビュー

このコーナーについて

ポッドキャストに関わる様々な方にお話をうかがっていきます。ポッドキャスト界隈からの熱いメッセージをお届けします。

バックナンバー