ポッドキャストに関わる様々な方にお話をうかがう「Podcast界隈」。 第六回目は、ポッドキャスターのひげフレディーさんをおむかえしました。
ひげフレディーさんは、ポッドキャスト番組「Fredio」を配信され、また2008年3月31日に惜しまれつつも閉鎖された、ポッドキャスターだらけの木造アパート「昭和荘」の管理人でもあります。
一応そうですね。聴くのも好きだし、自分で曲を作ったり、20代後半位まではそんなことをやっていましたね。
そうですね。音楽に関しては今はもう聴くだけですね。ベースなんか部屋の片隅にありますけど、インテリアのひとつみたいになっていますからね(笑)。
元々音楽を始めたのが、ベースではなくてキーボードだったんですよ。どちらかというとプレーヤーとしてライブをやりたいんではなくて、曲を作っていたんです。当時MIDIが出始めた頃で。
20歳か。じゃぁもうちょっと前、MIDIが出る前からかぁ?多重録音などをしていて。最初に買ったシンセサイザーがモノフォニックで、カセットテープ式の4トラックのMTRに重ねていって。キーボード、ドラムマシン、シーケンサーを使ってやっていました。
なんですか、気になりますね(笑)。
あー、ハイハイハイ。
あー、やっぱかなりハマりましたからね(笑)。
あの時代は避けて通れなかったですからね。
結構ポッドキャストをやっている人の中にも、スネークマンショーの影響を受けた人は多いんじゃないでしょうか。
でも桑原茂一さんもポッドキャストをやってらっしゃいますから。今でもスネークマンショー的なことをやってらっしゃいますよ。
辛口で、政治的なことを絡めながら。
スネークマンショーの喋りというか、ネタの部分と音楽のバランスというか入ってくるタイミングですね、あれは今でも影響されていて、結構意識しているんですよ。
あれは絶妙の選曲とタイミングなんですよね。どかーんと笑いが起こって、音楽が流れ出すまでの零コンマ何秒って凄い大切で。
ありますね。ずっとそれを追い続けてる感じがありますね。
今の話に通じるんですけど、ちょうど高校出た時代に、ミニFM局がブームになったんですよ。
そうですね。20歳だとして83年。82年くらいかな。ミニFM局を作ろうと。個人でラジオ局を作ろうというのがブームになって、飛びついたんですよね。 それこそ音楽も好きだったし、自分でも音楽を作ってるから、聞いてもらいたいなと思って。ポッドキャストの起源を辿るとそこに行き着くんですよね。19歳の頃に始めたミニFM局を未だに続けているみたいなところがあって。
ミニFMは3年ぐらいやったのかな。結局フェードアウトしちゃったんですよ。やっぱり電波が弱くて、聞いてくれる人が限られるんですよね。自己満足みたいな感じになってモチベーションが続かなくなっちゃうんです。それで一旦終わって、かなり潜伏期間があって、でも何かないかなと思っていて、インターネットの時代がきて、しばらくするとネットラジオがあるらしいぞと。
ストリーミングの場合、生ラジオですよね。生だと形になって残らないじゃないですか。1回喋るとその瞬間で終わりじゃないですか。なにか作品として残して、何度も聞いてもらえたり、そのとき聞けなくてもいつでも聞けるという環境で出来ないかなと思って、自分のサイトに音声データを乗っけて、それを聞いてもらうラジオをやったんですよ。ラジオと言えるかどうかわかりませんけど。そのラジオ形式のものを友人とやっていたのがポッドキャストが始まる2年ぐらい前だったと思います。
当時はファイルフォーマットはなんだったかなぁ。mp3ってありましたかね?
記憶が定かではないんですけど(笑)。ファイルにして3つくらい上げたころで、モチベーションが途切れまして。今ひとつしっくりこなかったんです。その2年後に、2005年ですね。ポッドキャストが日本でブレイクしたというか、iTunes4.9がリリースされたのが夏頃ですよね。
その半年くらい前に、ポッドキャストがあるっていうのを知ったんですよ。アダム・カリーという人がアメリカで始めたんだったかな。ポッドキャストっていう配信があるならやってみようかなと思って。それで番組を作り始めて、時が来るのを待っていたんです。半年後にiTunesがポッドキャストに対応。これでやっと正式にGoサインが出たということで、データをブログに引っ越しして始めたんですよ。
そうですね。どっちかというと音楽にまつわる薀蓄を喋りたかったんですよね。この曲は誰が参加してて、だからこれが好きなんですよという。純粋に喋りたかったわけではないんでしょうけど、音楽だけじゃつまらないなと思ったんですね。
自分の好きな曲を人に勧めて好きになってもらいたいときは、やっぱり説明したくなるんですよ。これはここが凄いんだよ、このギターソロが凄いんだよって一言添えたくなるんですよね。そのプレゼンを楽しむというか、それをゴッコにしてしまうというか。
単なる思い付きなんです。これもポッドキャスト以前に遡るんですけど、「昭和荘」的なことを、つまり音声コンテンツではない形でやりたかったんですよね。
というのは、ニューヨークにチェルシーホテルっていうホテルがあって、芸術家や作家やフォトグラファー、舞台関係の有名な人が住んでいるというのをテレビでみたんですね。これをインターネット上でやりたかったんです。無名だけど才能のあるイラストレーターでも、音楽家でも、文章を書く人でもいいから、集まって自分なりのプレゼンをするようなスペースをweb上に作りたいと思ってたんですよ。
一時は作りかけたんですけど、うまくいかない。まだ無名な、やる気のある、才能のある人達をどうやって見つければいいんだと。自分の近くの人、内堀から固めていくのは面白くないので、頓挫していたんですね、その企画が。そうこうしてるうちに自分がポッドキャストを始めて、その企画をポッドキャストに持ってくると、比較的実現が可能だと思ったのが一つ。
それから、あれは2006年の10月に始めたはずなんですけど、あの当時ポッドキャストを始めたいんだけど、どうやったらいいのかわらないという人がいて、自分で始めるんじゃなくて誰かの場所を間借りして配信を始めるならハードルが低いんじゃないかと思って。自分で何もかも管理するんじゃなくて、場所を借りてやる。自分の配信頻度が1ヶ月配信しなかった、2ヶ月配信しなかったとなると結構プレッシャーになるじゃないですか。でも、自分が更新しない間も誰かが更新しているかもしれない。すると余計なプレッシャーを感じなくて済む。
そんなことで始めたんですけど、まさかあんな形になるとは思わなかったんですよ。初心者はほとんどいなかったですし、すでに2つ3つ番組をやっている人達が入りたいんですって言ってくれたり。予測していなかったですけど。
そうですね、イメージの中には「トキワ荘」のイメージもありましたね。
結構名だたる人達がそこに住んでいたんですよね。
そうですね、3月31日にやめましたね。
役割は終わったかなぁと感じたんですよね。続けようと思うといつまででも続けられるんですけど、別に続けなくても、そういう場所を必要としている人がいるんだったら、他の人が同じような場所を作ればいいし。もう終わりますって言うことによって、最後に一花咲かせようかなといういやらしい気持ちもあって(笑)。やめる半年前に、半年後にやめると発表して。
ポッドキャストをされる方のなかには、ボイスブログという『声による日記』というスタンスでやってらっしゃる方もいると思うんです。そういう方にはタイムカプセル的な意識はそんなにないのかもしれないですけど、ボクがやっている「Fredio」というポッドキャストに関しては、そのファイルをアップした日付を出さないようにしてるんですよ。これがいつ配信されたものかというのをあまり意識してもらいたくないというか。いつから聞き始めていただいても、ある程度の普遍性をもって聞いてもらえるような番組を作りたいという気持ちがちょっとあるんですよ。
初めて来た人にはわかりにくいかもしれませんけど(笑)。
今は「Fredio」だけなんです。「Fredio」の中で、いろんなカテゴリというかタイプの番組が詰め合わせになっている形なので、100%なにか喋っているかというとそうでもなくて、それこそ曲ばかりかかっているとか、外で生録してきたものをそのままポンと流している番組もあって。自分が喋ることには重きを置いていないので、そういう意味では少数派かもしれませんけど。
できるだけわがままになってほしいな。人の言うことに耳を貸さないような、枠にとらわれないというか、自己流でわがままにやってほしいですね。
ポッドキャストを始めようと思うからには、きっと誰かの何かの番組を聴いて「こういうのやってみたい」とお思いになったんだと思うんですよ。その人を参考にしたり、真似するのはいいんですけど、上手く真似が出来て満足するんじゃなくて、その向こう側に自分のやりたいスタイルを見つけてほしいなと思いますね。
そうですね。仕事じゃなくて遊びなんだったら、好きなことを追求しなきゃ話にならないですよね。自分のやりたいスタイルがあればそれをやっていただいて。無理して何かのスタイルの中に入っていくんじゃなくて、今あるポッドキャスター達の番組を全否定するくらいの気持ちで「ほら、こんなことも出来るんだぜ」みたいな、破壊するような人達が出てきてくれるといいですね(笑)。
あ、でもね、ボクは若い人とは限らないです。結構期待しているのは団塊の世代ですね。仕事も終わって、これから好きなことを好きなように言えるじゃないですか。しがらみもなくなって。今までやってきた悪行の数々をカミングアウトするポッドキャストとかね(笑)。
そうですよね(笑)。若者に対する凄い説得力があるじゃないですか。若い人は黙っててもやるだろうけど、注目しているのは、もっと上の世代の人達が入ってきてくれることですね。