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インタビュー

Vol.03 ちん 友達になるであろうあなたのために喋る

ポッドキャストに関わる様々な方にお話をうかがう「Podcast界隈」。第三回目は、ポッドキャスターのちんさんをおむかえしました。

ちんさんは、ポッドキャスト番組「Bonchicast」、ネットラジオ「AirBonchi」を手掛け、2008年春からエフエム福岡「ちんさや」でご活躍中です。

エフエム福岡非公認サイト「ウラジオストック」もご覧下さい。

ネットラジオ、ラジオ、そしてポッドキャスト

まず皆さんにお聞きしているんですが、ポッドキャストとの出会いは?

私は元々ネットラジオから入っているんですね。ネットラジオをやりたくてネットラジオを始めたんではなくて、なんとか喋れねぇかなと。

喋りたいことがいっぱいあった?

あんまりなかったんですけど(笑)。とりあえず喋れないかなと方法を考えていて、その当時はネットラジオしかなかったんですよ。しかも、理想としては普通の音楽をかけたかったんですよ、ラジオみたいに。

喋りたいのと音楽をかけたいのと。

そうです、音楽をかけながら喋りたい。その方法を考えていたらネットラジオがありましたと。というので2、3年やっててポッドキャストっていうのが出始めたんです。ちょうどiTunesがポッドキャストに対応するちょっと前ですね。その頃からポッドキャストも始めてと。そんな感じでしたね。

元々喋りが好きだったんですか?

なんでしょう、今となってはわからないですね。 どっちかというと音楽をかけたいというのが強かったですね、最初は。

なんでしたっけ、Good Music Bad Talkでしたっけ。

そうですね、ただ音楽だけかけても聴いてくれないんで。じゃ、喋ろうかという感じはありましたね。 ポッドキャストに移る動機は、ネットラジオではパイがすっごく小さくて、インディーズの音楽を紹介するようになったんですけど、多くの人が聴いてくれないとアーティストさんが喜んでくれないという実感がずっとあったんです。ポッドキャストはもしかしたらパイが広がるんじゃないかなという予感があって始めてみたんです。

実際はどうだったんですか?

やっぱり桁違いで、聴いてくれる人が増えたんです。自分の思ってる以上に聴いてもらえてる実感がありましたね。

反響もありました?

反響もありましたね。

ちんさんはラジオもやられてますよね。

はい。普通のFMのラジオですね。この春くらいから始めさせてもらいまして。

ちんさやという番組を。そのきっかけがポッドキャストだと聞いたんですけど。

ポッドキャストがきっかけで、ネット周りのラジオ配信に興味を持っているエフエム福岡とかのプロデューサーさんと知り合いになるきっかけがあって、喋るというよりはアドバイザーみたいな感じで参加する予定だったんですが、気が付いたらそのまま喋ることになっていたみたいな(笑)。

でもよかったですよね、喋る場が広がって(笑)。

あと、ポッドキャストってどこかラジオに対してコンプレックスがあるんですよね。私はちょっとあって、1回観てみたいというのがあったんですよ、プロの現場を見てみたいと。そのチャンスがあったので、それに乗っかろう。それを見た上でもう一回ポッドキャストをやってみたらきっと面白いものができるかと、今一生懸命やってるんですけど。

それを両方やっている方って、一般にはいないわけですけど、ポッドキャストとラジオの違いって何ですか?

いっぱいありますけど、FMにはできないけど、ポッドキャストにしかできないことがいっぱいあるんですよ。それはお金が絡んでくる問題だったり、機動力だったり、ありますね。

ポッドキャストは、制約のない自由な世界ですか。

そうですね。プロのFMの現場っていうのは制約はありますね。

ラジオにはラジオのよさもありますか。

絶対にありますよね。プロフェッショナルとしてのこだわりの部分とか。だから逆につまらないこともいっぱいあります。それはポッドキャストがやるべき面白いところですよ。

ラジオは生き残らないといけない、生き残りをかけている時代になっているんですね。素人のポッドキャスターを使ってみるかという実験をやってみたり。ガタイが大きくなりすぎた分、スポンサーさんもいるし、身動きが取れなくなったり。 そういう意味ではポッドキャストにしかできないことがいっぱいあるということに今気付いてきています。

「ちんさや」では二人で喋っていますよね。外にディレクターさんがいるんですか?

います。ディレクターさんとプロデューサーさんが。

FMとかラジオのいいところは、喋る人は喋るだけなんですよ。卓(ミキサー卓)をいじる人は卓をいじる。それが一番いいところで。ポッドキャストの一番厳しいところは、ほとんどが個人作業でしょ。喋るもいじるのも。

だから前々から ヒロカズさん(ヒロカズエモーションさん)とかと喋るんですけど、ポッドキャストの一番つまらない所は、配信するまで努力しなくてはならないことですよ。ソフトも覚えないといけないし、録音の仕方を覚えないといけないし、マイクの挿し方を覚えないといけないし、サーバーも見つけないといけないし、そこにアップしないといけない。そこまで努力する人じゃないとできないでしょ。

お話っていうのは、一生懸命やるマジメな人の話って往々にしてつまらないものなんですよ(笑)。一番面白いのは無責任な人の話じゃないですか(笑)。超ウソツキとか、超努力をしない人とか。そういう人こそ話が面白いんですけど、そういう人は配信まで到達しない。これがポッドキャストの一番辛いところですよね。

なるほどね~。深いですねぇ~。

ちゃんとソフト寄りの話になってるでしょ(笑)。そこでExPodですよみたいなね(笑)。まだまだハードルが高いという気がします。ポッドキャストのネックはそこですね。

今やってて楽しいのは何ですか。ポッドキャストやってきて。

今はポッドキャストは休んでますから、FMの方をちゃんとしてみようと。中途半端にやらずに。しばらくこっちだけまじめにやってみたらどうなるかをしてみたい。で、それもポッドキャストでやってますから。今面白いなというのは、自分が喋ることでどれくらい面白いことが、自分の力でどのくらいまで喋れて、全然知らない人にどこまで聴いてもらえるだろうかと、もう一回原点に戻ってやれてることが一番面白いですね。”ちん”ったって誰も知らないですし(笑)。

有名なアーティストでもアイドルでもない。

全く無名の年寄りの知らない人ですよ(笑)。そういう人が喋ってどのくらい喜んでいただけるのか、それが面白いですし、ポッドキャストの一番面白いところがそこだと思うんですよ。知らない人が話してるのに、それを面白いと思ってくれる人がいるということ自体がポッドキャストの面白いと思うんですね。

声って強力ですよ、やっぱり

はじめてカセットに録音した自分の声や喋りを聴いてショックを受けたんですけど。

それはみんなそうですよ。基本的に自分の声は、所詮、骨を伝導して聴こえてるわけですから。

それに気付くのが結構遅かったんですよね。ポッドキャストを始めるのにそこに壁を感じたんですよね。自分でもキライな声を聴いてくれた人がどう思うんやろうと。

でも自分の声を、自分以上に嫌いな人ってあんまりいないんですよね。

なるほど。

私も自分の声は大っ嫌いですよ。やっぱり最初の違和感がトラウマみたいにあるので。だけど、それを乗り越えると素晴らしいのは、どーんなに声が悪くても、滑舌が悪くても、ずーっとポッドキャストを続けていると、誰かひとりかふたりは「好きです」ってメールが届いたりするんですよね。もしくは、聞いてますよって言ってくれることがあるんですよね。自分に自信が持てることがあるんですよ。

誰かも言ってましたが、声ですと人柄が出るんですよね。 ブログをやってる人に、少しでもこっち(ポッドキャスト)に来て欲しいなと思っているんですけどね。

そうですね。喋っちゃえばいいんですよね。

普段、友達と他愛も無いことを喋ってるじゃないですか。その延長でと思うんですけど。

うん。でもあるブログをやってて、ポッドキャストをどうしてもやりきれない人と、飲み場で話してて、あぁそうかもしれないなと思ったのは、確かにブログもそうなんだけど、友達に話すようにポッドキャストで話せばいいんだよって言うじゃないですか。「お前言うけど、電車の中で全然関係ないヤツが大声で喋ってるのってあるじゃん。あれ、すごい不愉快でしょ。」って言うわけ(笑)。 向かって話されるのはいいけど、後ろで話されるのは地獄だからと。なるほどねと(笑)。確かにそういう風に考えればそうかもしれないと。

ただ、それはブログも一緒なんですよね。そのときに仲のいい人だけに反論してるのは、私の書いたクソったれな文章を何万人に公開するのと、声を晒すのと、一体どう違うのって反論するんですけど。非常に説得力があると自分で思うんですけど、あんまり評判がよくなくてですね(笑)。

あはは(笑)。ブログって、例えばmixiですけど、やっててよかったなというのは、例えば幼馴染が発見してくれたり、同じ趣味を持っている知らない人と繋がりますよね。それが地声ですと、あーあいつの声聞けるなとか思ってくれますよね。

私もブログを長くやってますけど、一旦結びつくと、声って強力ですよ、やっぱり。初めて会うのに、もう本当に昔から知ってるような接し方をしていただけるんですね。それはね、すごく不思議な感じですよ。

そうですね。ゼミナールで初めてイベントに参加したんですけど、あーあの人やというミーハーな感覚もあって。あの声の人が目の前にいるみたいなね。前から知ってるような感覚が芽生えますね。

そうですね。私なんかとくに、ボンチキャストでは身の周りのことしか話さないですね。考えがあって。初めて会う人なのに、ウチの親よりよく知っている人がいっぱいいるんですよ(笑)。サイテーですよ、考え方によっちゃ(笑)。

そういうのもひっくるめて面白いですね(笑)。我々も自社商品のtipsとか内部のスタッフが出て行って話しているんですけど、ちょっとでも親しみを覚えてくれたらいいなと思ってやってるんですけどね。

そういうのが滲み出るのがポッドキャストのいいところなので、それを開放していった方が、みんな楽しめると思うんですね。そこが文章と違うところですね。

友達になるであろうあなたのために喋る

最後に、これからポッドキャストを始めようと思っている方にメッセージをお願いします。

今日いろいろお話した中で、ここからが私が一番言いたいところなんですけども、つまんない屁理屈とか、将来を憂えたりとか、状況がどうとか、そういう風なことをいろんな人が喋ってますが、そういうのは聞く方はつまんないですよね。

喋りたいことがないっていうんですけど、ないはずはないんですね。知らない人に喋ることはないっていう意味だと思うんだけど、とにかく石を投げるみたいにして、誰かに向かって喋ると、あなたが喋ったことは必ず誰かが、もちろんNGって言う人もいるけど、OKっていう人がいるのが、ネットでの音声の配信だと思うので、もしかしたら今まで知らない新しい世界とか、新しいお友達とか、だからラジオとはちょっと違うんですよ。誰か、見えてないけども確実にお友達になるであろうあなたのために喋るという、この快感を一回やってごらんと言いたいですね。どっか脳の回路がパカって開く感じがしますからね。楽しいですよっていうことですよ。

ありがとうございます。深いですね。

で、お年寄りは早く引退した方がいいですよ。私も含めてですね、あの爺達が喋ってることはホント面白くないと言って、若い人達が出てこないと、ポッドキャストってきっと盛り上がらないんだと思います。<ピー>と(笑)、私含むですけど(笑)。

(笑)。スゴイ熱いメッセージとして受け取りました(笑)。

こういうこと言うとまた批判がね(笑)。

ありがとうございます(笑)。でも若い人も出てきてますよね。

そう。そういう人達が出てこないとつまらないですよ。

さっきの話じゃないけど、<ピー>の話ですよ。私が爺だから言えるんですけど、新しい人が台頭してきて、抗争ですよね。それを繰り返すことでやっぱ活性化していくと思うんです。世代間で活性化していかないと面白くないでしょう。やっぱつまらないもん、同じ世代の人の話ばっかり聞いてても。

ボクなんか音楽から入っているので、ポッドキャストを作ってる過程が楽しかったりするんですけど、喋ってるよりも。楽しみ方はいろいろあっていいんですけど。

私はポッドキャストの作り方とかブログでやってたんですけど、基本的な方針としては、機材に凝ってはいけない、ソフトに凝ってはいけないというのを原則としていて。そこで止まるとつまんないことになるぞって。作り方で凝るのは楽しんですよ。でもそこでハマってしまって、配信しなくなる人って多いんですよ。音質に凝りだしたりすると。そこでハードルが上がってしまって。

もっと本質的なこと言うと、聴く方は関係ないんですよ、意外と。音質がよくてつまんないのと、雑音だらけで面白いのと、どっちがいいよ?って話になると(笑)。音楽は音色で聴けますけど、喋りっていうのは音色だけで聴くって難しいですからね。

文中の<ピー>について: インタビューのコーナーでは、お話していただいた内容をできるだけ忠実に掲載する、という方針で進めております。

本来なら、この熱いメッセージをそのまま掲載したいところですが、テキストという表現の特性上、思いもよらぬ受け取り方をされる可能性があると判断し、伏字とさせていただきました。

ちんさん、熱く語っていただいたのに、すみません。ご理解ください。

Podcast界隈:ポッドキャストに関わる方々へのスペシャルインタビュー

このコーナーについて

ポッドキャストに関わる様々な方にお話をうかがっていきます。ポッドキャスト界隈からの熱いメッセージをお届けします。

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